2006年度大阪大学院試験
理学研究科化学専攻の基礎化学の問題[2−2]
光子エネルギーhνの光による分子Mの光イオン化過程
M + hν → M
+ + e
-で放出される光電子の運動エネルギーE
kを測定すると、
分子のイオン化エネルギーIEは次のように求められる。
IE = hν − E
k光電子の量をIEに対してプロットしたのが、光電子スペクトルである。
分子軌道計算から得られる準位のエネルギーは、IEの符号を変えた値と、
近似的に等しいので光電子スペクトルには個々の準位に対応するバンドが
エネルギー順に現れる。一酸化炭素のCOの光電子スペクトル(図1)と、
エネルギー準位図(図2)について次の問に答えよ。
ただし、図1ではヘリウム放電管からの21.22eVの光を用いており、
IEの最も小さい領域を測定している。


問1 COの電子配置を示せ。
電子は下から順番にフント則を満たしながら入っていくので、
6+8=14個の電子は図2右側のように入る。
問2 図1の光電子スペクトルは三つのバンドa、b、cからなる。
各バンドがどのエネルギー準位からの光電子放出に対応するかを記せ。
イオン化エネルギーは軌道の準位エネルギーの符号を変えたものであるから、
電子の入った軌道の準位エネルギーは通常負である。
よって、電子の入った最も高い準位からのイオン化が
最も小さなエネルギーしか必要としないと考えられる。
よって、a、b、cは上から順に、5σ、π、4σ、となる。
問3 各バンドに見られる鋭いピークは、CO
+の振動を示し、
各バンド毎にIEの大きい方に向かって振動量子数v=0、1、2、...
の状態に対応する。バンドbでv>1が強く出る理由を、
関与するエネルギー準位の結合性から説明せよ。
ただし、イオンと中性分子とで平衡原子間距離が
大きく異なっているとき、振動励起が起こることを考慮せよ。
5σは図2右側を見ると分かるように、Oからの非共有電子対が入り、
結合にほぼ関与していない。
しかし、πの電子は結合に大きく関与している。
結合に関与する電子が1個引き抜かれると、結合次数が減少し、
結合力が弱まって、平衡原子間距離が長くなる。
この図を見てほしい、

左下の振動モードがCOのもので、真上と、右上がそれぞれ、
5σ、πの電子が引き抜かれたときの振動である。
もし、COの振動モードから5σに励起された場合、
振動準位はv=0からv=0にしか励起されない。
しかし、πに励起される場合、COの長さが違っており、
v=0からv=0に励起されるには、結合長の変化が必要になる。
だが、v=0からv=2、3への励起には結合長の変化が必要にならない。
よって、v>1のピークが強く出ることになる。
posted by Hosh!kawa at 10:24
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院試問題解答